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ミルクの歴史
2004.4
育児用コナミルクには、赤ちゃんにとって必要な栄養素が、微量栄養素も含めて広く強化されています。添加されているビタミン、ミネラル、その他成分については、ミルクの缶に原材料表示がなされています。その多さに驚かれることでしょう。これこそが、最初にお話しした「母乳が出なければ、天然・自然の牛乳で育てる」、という考えに走ってしまった一番の原因だったのではないでしょうか。しかし、まさにこれこそが赤ちゃんの健康な発育を支え、今や母乳栄養出来ない赤ちゃんが安心して人工栄養に頼れるようになった根元なのです。
赤ちゃんにとって鉄は大変重要な成分です。現在世界的に乳幼児の鉄欠乏が問題になっています。鉄欠乏性貧血というのは、血液中で酸素を運んでいるヘモグロビンが減って酸素不足を起こす、れっきとした病気です。なおヘモグロビンというのは、鉄を含んだヘムという分子とグロビンというたんぱく質が結合したものです。貧血にまで至らなくても、鉄不足の状態ではいろいろな神経伝達物質の代謝に変化が見られます。このような子ども達で認められる過敏な反応性や注意力のなさ、作業検査での低いスコアとも関連していると見られています。
もともと赤ちゃんは、体内に鉄をかなりため込んで生まれてきます。そのためだと思いますが、母乳中には鉄がわずかしか含まれていません。牛乳でも同様です。しかし満期出産の赤ちゃんでも、数ヵ月を過ぎると体内の鉄も枯渇しなくなってきます。 欧米ではこれまで、育児用のミルクでは鉄を含まないものが主流で、鉄を含む食品、いわゆる補助食品がかなり早い時期から導入されていました。しかし生後4〜6ヵ月以前の赤ちゃんにこのような補助食品を導入するのは、「百害あって一利なし」との勧告があって、最近では鉄を強化したミルクが、“with iron(鉄入り)”と特記して主流になる方向にあります。日本では、0〜2ヵ月の哺乳量の少ない乳児でも鉄の所要量が満たせるように、ミルクには昔から鉄が加えられており、今更“鉄入り”と言うまでもなく、貧血はもとより鉄不足の心配はありません。
動物性食品(肉やレバーなど)に含まれる鉄はヘム鉄で、腸管からの吸収はほぼ100%と言われ、与えれば与えただけ吸収されるとされています。補助食品としてヘム鉄を利用する場合には、むしろ過剰摂取に対する注意が必要です。一方食品に強化する目的では一般に無機鉄が利用され、育児用コナミルクにも、利用性の高い無機鉄が加えられています。利用性が高いと言っても無機鉄の吸収率はせいぜい10%台ですので、ミルクへは、添加量の10%が吸収された時に所要量が満たせるように添加されています。腸管からの無機鉄の吸収には、必要量が満たされればフィードバックが掛かる(それ以上の吸収を抑える作用が働く)と言われていますので、まず過剰摂取の心配はありません。
吸収されずに大腸に達した鉄分は排泄されます。その過程で、含硫アミノ酸由来の硫黄成分と反応し、いわゆる緑便となる場合がありますが、そのこと自体は異常ではありません。
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