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ミルクの歴史
2003.09
1960年頃までの人工栄養児は、体重発育は母乳栄養児をむしろ上回るほどでしたが、何となくぶよぶよして、皮膚がかさかさしていました。原因は、体内で作り出すことのできない必須脂肪酸が、牛乳脂肪だけでは不足だったからです。1960年代に入り、育児用コナミルクに関する厚生省令が改正され、いわゆる脂肪置換ミルクが発売されるようになって、赤ちゃんは母乳栄養児並みに堅太りとなり、皮膚のかさかさも解消しました。
必須脂肪酸であるリノール酸を多く含むコーン油で牛乳脂肪の一部を置換したミルクの出現です。体内ではリノール酸からアラキドン酸が、更にそれから色々な生理活性物質が作られ、それぞれ重要な働きを持っています。
リノール酸と構造の似た必須脂肪酸にα-リノレン酸があります。生体内では、α-リノレン酸からお馴染みのEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などが生合成されます。これらはいずれも脂質代謝に関係するものですが、特記すべきは、DHAは神経作用と深く関わっているということです。
しかし大人と違って幼若乳児では、これら長鎖多価不飽和脂肪酸の生合成能力が弱く、特に未熟児や新生児では体内の蓄積量が少なく、食事として摂取する必要があります。だからこそ神様は母乳中に十分量のアラキドン酸やDHAをバランス良く含ませたのでしょう。
必須脂肪酸の研究を基礎に更に改良されている現在のミルクでは、必須脂肪酸であるリノール酸やα-リノレン酸だけでなく、脳や心身の発育・発達に不可欠なDHAやアラキドン酸、そしてコレステロールまでも含めて、母乳の脂質バランスに近づけられています。
DHAは大脳皮質や目の網膜中に多く含まれることから注目された脂肪酸ですが、一般の方々がDHA、DHAとマグロの頭を信心されるずっと以前から、明治乳業では世界に先駆けて、育児用コナミルクにDHAを強化してきました。
10年近く前になりますが、日本で開かれた「DHAシンポジウム」で英国のCrawford博士が、「日本の子供達が頭が良いのはDHAを多く含んでいる魚をよく食べるからだろう」と発言したということです。このようなことを直接証明することはとてもできないでしょうが、ひとでも、DHAを強化する以前の人工栄養と母乳栄養との比較では、網膜反射能が母乳栄養児の方で高いことが示されています。
ところで皆さんは、"コレステロールは悪者"とお考えではないでしょうか。
コレステロールは、体内では各種のステロイドホルモン、ビタミンD、あるいは胆汁酸などの生合成の際の出発原料になるだけでなく、神経細胞を始め全ての細胞膜の構成成分として大切な役割を演じています。従って脳や身体の発育が活発な赤ちゃんの時期ほど、相対的にコレステロールの重要性が高まります。
米国の小児科学会などでは、「成人病を意識するあまり、乳幼児への脂質投与を控えるべきではない」、「特に2歳までは、コレステロールを始め、脂肪の摂取を制限すべきではない」とのコメントを出しています。
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