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ミルクの歴史
2003.06
前回に引き続き、二木先生の話を続けましょう。
『ミルクで育てたことで子供に「悪いことをした」とコンプレックスを持つこともあります。何か病気になると人工栄養で育ったせいではないかと思い、負い目を感じたりします。もちろん、人工栄養でも愛情深く育てれば、何も心配することはないと明るく考えるひとも少なくありません。』
『これと関連して、ある育児雑誌の編集者の話によれば、乳児相談の窓口での体験では不思議なことに、母乳育児のお母さんは育児にゆとりのないひとが多く、逆に人工栄養のお母さんはおおらかな傾向があるというのです。
母乳栄養のお母さんは何が何でも母乳でと気負っていて、「母乳が出なくなったらどうしよう」という一種の危機感のようなものを持っているのでしょうか。もっともそうした育児相談には、母乳に対して「出が悪いのではないか」など、何らかの不安感を持っているひとが多く来るためでもあるでしょう。
それに対して人工栄養にしているお母さんは、「もうどうせ母乳主義は貫けない」と開き直り、あるいは開き直った結果としてミルクを足しているのか、そこでゆとりが出たということかも知れません。』
『この話は大変示唆に富むもので、とにかく母子関係で大事なことは、お母さんのゆったりした気持ちと愛情です。たとえ母乳栄養でも、イライラした状態では逆に最悪の母子関係となります。これは、母乳かミルクかの問題ではないのです。』
このような二木先生の話を聞きながら、筆者には、九州で小児科を開業しておられた先生の言葉が思い出されました。
母乳の組成や栄養代謝面、免疫効果などが解明され、母乳のメリットが理論的に、また学問的に明確に説明できるようになる以前、まだ母乳栄養のメリットとして「スキンシップ」が主として強調されていた頃のことです。その先生は、「お母さんがテレビを見ながらただただ乳房から乳を飲ますのは決してスキンシップではない。たとえ人工栄養であっても、赤ちゃんをしっかりと抱きかかえ、目と目を合わせながら心を込めてミルクを与えるならば、それこそ“本当のスキンシップ”だ」、と言われました。母子関係の神髄を言い当てている言葉として、今でも耳に残っています。
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